バース大学のMBAコースが開始して3ヶ月が経ちました。
授業の内容は、マーケティングや企業戦略、コンサルティングなど理系出身には全く馴染みのないものばかり。
3ヶ月の経験から理系出身でMBAをやりきれそうか、展望を示そうと思います。(というか自分の指針かも)
結論:問題なし
始めらから結論ですが、理系出身でもMBAの授業についていくことは全く問題ありません。
よくある懸念は、MBAで習うことを今まで学習してこなかったからついていけるのか、仕事で研究ばかりしていたのでリーダーシップや企業経営について知らないから不安、などだと思います。
大丈夫です。今まで学習してこなかった、経験してこなかったことを学びに行くので、むしろ知らないほうがたくさんの知識・経験を得ることができます。逆にこれらの知識・経験を持っている人はわざわざMBAに行く必要はないのではないでしょうか?
よく考えてみると、理系出身であろうが、文系出身であろうが、大学で勉強したのはたった4~6年(留年ではないですよ、大学院を計算して6年です!)。また新卒で企業に入社しても大学時代の専攻を活かせる人はほとんどおらず、皆さん一から企業での仕事について勉強したと思います。
私は、大学・大学院時代、合成化学(世の中にない新しい化学物資を作るぞー!という研究)を専攻していましたが、新卒1年目で初めに与えられた仕事は、出版予定の書籍に利用する写真を新聞から引用していたので、新聞社への許可取りです。まったく化学反応の知識・経験を活用していませんでした。その後もセミナーを主催する仕事を担当したり、イギリスの政治・経済・EU離脱を調査したりと、学生自体の専攻とは全く異なるキャリアを歩んできました。というか、学生時代の専攻を活かせたことは稀です。
日本の企業は、ポジション採用ではなく、新卒一括採用で、新卒を一から教育し自分の会社になじませるシステムなので、少なからず皆さんも同じような経験をしていると思います。
何がいいたいかと言うと、学生時代の専攻はMBAにおいてほとんど関係なく、最も重要なのは、新しいことを次々と勉強していけるか、ということです。
新卒1年目の時に皆さんがしたように、MBAのコースが始まっても新しい学問や物事の考え方を好奇心を持って勉強していければ、理系出身だろうがなんら問題ありません。
授業についていけるかどうかは、理系・文系出身によって左右されるのではなく、今の自分のやる気に依存するしますので、まったく気にすることではありません。クラスメイトにはファッションデザイナーだった女の子もいますし。彼女はもちろん、経済・経営なんて知りません。
※卒業後追記(2022年11月)
授業の前半はいい成績がなかなか取れませんでしたが、4カ月くらいたってからは最上の学位Deistinctionを連発でとれるようになりました。バース大学MBAは試験はなく論文が成績評価の対象であり、理系出身の我らは、論文の構築がすこぶるうまいため、やり方さえ慣れてしまえば授業についていくことはもちろん、いい成績を収めることができます。学生時代、研究室にこもっていた人ほど成果がでやすいですよ!
問題点は「英語」
一番の問題は、英語。もはや理系出身とか関係ありません。
特にリスニングです。
TOEIC860点、IELTS6.5のスコアを持っていますが、これでは全く足りていないのです。(バース大学の入学条件はIETLS7.0です)
私と同じく、英語の補講に参加していたMBAのクラスメイト達と話していると、
教授やクラスメイトが何をいっているか理解できないんや。せやから発言できないんやで。
という悪循環に入ってしまうのです。
解決方法は・・・がんばって聞く!くらいでしょうか?
バース大学には、大学院生を対象として週に1回1時間の英語の補講を無料で開催してくれています。これに参加するのも一つの手です。
ただ、一番効果があるのは、クラスメイトとの会話をたくさんすることだと思います。幸い(?)クラスメイト40人の中に日本人は私1人だけなので、嫌でも英語でコミュニケーションを取らなければならず良い訓練になっています。
その他の問題は、欧州人が得意な概念的思考を理解するのは大変ということ。
理系出身であれば、データや根拠があればすらすらと物事を理解できると思うのですが、これらが揃ってない時の議論に苦労します。
マーケティングや企業戦略は、特定の答えが用意されておらず、データや数字を用いた分析ができないことも多く、過去の学者さんたちが開発したフレームワークなるものを当てはめて解決を探るということが多々ありますが、その効果や結果を具体的にデータを用いて示すことができないので、理解に苦しみます。少なくとも、私は最初の2ヶ月間くらいは、この考え方や授業内容を受け入れられずストレスマックスでした。
ですが、実際にフレームワークを使いながら資料を作ってみたり、レポートの文章を考えて見たりすると、次第に慣れていきますので、これは時間が解決してくれます。
理系出身者はむしろ利点が多い
理系出身者が持っている、または大学・大学院時代に経験しているものはなんでしょうか?
それは激務。ひたすら英語の論文を読み漁り、意味がわからないながらも(それは私だけ?)、論文に書いてある内容をつかみ自分の実験に応用していくことは、研究の過程で相当訓練されています。
3ヶ月の授業は、今まで知らなかったことばかりを教えてもらうのですが、大学時代の研究に当てはめてみると、知らなかったとこを自分で探さずに教えてもらえるだけでスーパー楽な状況です。
さらに、習ったことをコンサルティング・プロジェクトや企業分析のレポート作成に応用するので、これはまさに理系の人が論文で得た情報を自分の実験に応用する過程そのものです。
また、データ分析や理論的な考え方も元々備わっているので、授業の内容さえわかってしまえば、苦労することはありません。
他の利点として、理系出身者が少ないということ。数字やデータを見ることが苦手なMBAのクラスメイトは、条件定義が甘かったり、理論が飛躍していきなり結論を語りだそうとすることが多い印象です。そこで、我ら理系出身者の出番。冷静に、今の課題を再定義したり、説明の仕方を1つ1つのステップを踏んだほうがわかりやすいことなどをクラスメイトに共有してあげると、彼らは元々いろいろな考え方を持っているので議論が素晴らしい発展をしたりします。
データを読める人や論理的な考え方をデキる人はクラスメイトの中でも重宝されるのです。私のクラスメイトに、財務関係の知識が豊富な韓国からの学生がおり(理系かは定かではありませんが)、彼と一緒にグループ・ワークをした他の学生は
またあいつと一緒のグループがええんや。
と口を揃えています。彼は、財務の観点からモノを語ってくれるので、とても説得力があり話も論理的なので、他のクラスメイトを惹き付けているのでしょう。
※卒業後追記(2022年11月)
繰り返しになりますが、理系出身でも全く問題なくMBAを卒業できました。むしろ、上述したような理系だったことのメリットが大きかったと感じています。MBAは何か専門的なことを突き詰めるのではなく、経営やビジネスに必要な知識を広くうすーーーく学ぶものですので、新しい科目ごとに自分で+アルファで勉強すれば、ほかのクラスメイトよりも断然にいい成績をとることができますよ。理系で鍛えた「勤勉さ」を十分い発揮していきましょう!
理系出身でも十分に授業についていくことができます。学生時代、研究室に泊まって研究に勤しんだ日々を思い返して勉学に励めばなんら問題ありません。
「理系でMBAってどうなの?」感じている方が、そんなの関係ないんだなーと思っていただければ幸いです。