先週の火曜日(2022年613)に Entreprenershp in Action というグループで起業アイデアをプレゼンする授業が終わりました。
3月のグループ決定から、最終プレゼンまで約3か月かかったプロジェクトですが、最終的に素晴らしい結果を残すことができました。
引かれる調査
今回のプロジェクトは、グループで起業するアイデアを決め、それを実際の投資家の前でプレゼンするというもの。
以前のブログで書いた通り、グループ決めの駆け引きやアイデアの錯綜などがありましたが、その後、新しい不動産サービスを提供するという案に落ち着きました。
イギリス人のメンバーが、不動産のバックグラウンドがあり、古い不動産を買って、リノベーションをし販売するというビジネスモデルに。
その中で、私は市場調査を担当。この分野は全く知らないので、住宅価格の統計や、どの地域に進出すべきかのデータ集めとして人口とその増減、失業率などなどの情報収集をし、綺麗なスライドを作ってメンバーに共有しました。
それまで、私はほとんど意見を発することはなく存在感もなかったのですが、この調査結果を見て、
うわぁ・・・
と、メンバーが引くほど感動してくれました。最初は単に細かいデータを出してきて本当に引いているのだと思いましたが、そのデータがたびたび彼らの会話で使われており、グラフも積極的にスライドに入れようとしていたので、気に入ってくれているようです。
ここは私の戦略なのですが、結局どのようなすばらしい調査をしても、見せ方ひとつで見るほうの結果は変わってしまうため、今回は、データ集めと同じくらいスライドのビジュアルにこだわりました。単純に集めたデータを表にして大事なことろだけ赤字にするとかでは、たとえ内容が同じでも綺麗にグラフ化されたデータと感じ方が全く違ってしまい、結局、綺麗に見える=とてもいい情報に見えてしまうのです。
ですので、今回は他のメンバーがスライドで使用していた深緑の色を使い、自分でグラデーションや様式のルールを作ってスライド作成をし、ビジュアルをきれいにすることで大成功しました。
その後は、市場調査とデータのビジュアル化は私の担当となり、グループの会話の中で私の名前が挙がることが格段に増えました。
私たちのグループは、当日のプレゼン資料(パワーポイントのスライド)のほかに、投資家用へのハンドブックを作成しており(これはマストではなくこのグループが勝手にやっているだけ)、その大半が私が作ったグラフで埋まりました。よほど気に入ってくれたようです。
プンスカ プレゼン・フィードバック
本番の前日、我々のグループはネイティブの2人(イギリスと南アフリカ)がプレゼンを担当することとなり、ずーっと二人で打ち合わせをしていました。その間、私を含む残された4人は質疑応答の想定質問(ほぼ私が作成)に対しての回答を議論。夕方4時になって、初めてプレゼン者の2人から通しでの発表を聞くことができました。
私は、以前のプロジェクトでもそうですが、フィードバックがとても有効と思っており、プレゼンを聞いている間に紙にどんどん思ったことを書き最後に共有します。1回目のプレゼンが終了した際、私を除いたほかのメンバー3人は、
グレートや。パチパチ
明日はいけるな。パチパチ
と絶賛しており、なんら指摘はありませんでした。私は空気を読んでフムフムと聞いていたのですが、すぐに第2回目が始まってしまい、ほぼ同じ内容のプレゼンを聞かされるハメに。当然ながら聞いていたメンバーからは意見はなく拍手のみです。
私としては、結構意味不明なプレゼンだったので、ここはさすがに何か言わないとまずいと思い、
この事業には3つのやりたいことがあるように聞こえるっス。建築業界ではカーボンエミッションの削減が進んでいないので、解決したい。不動産を買うための資金調達をしたい。不動産を売りさばきたい。どれがお話の本筋なのか見えないというのが正直な感想。イントロダクションが環境配慮のストーリーだったにも関わらず、お話の締めは投資家に10%のリターンがあります、では筋が通っていないのではないっスか? 環境配慮を押したいのならば、その結果〇〇%のCO2削減に貢献できます、とかで締めくくらないとお話がまとまらないっス。
と軽くジャブを。
もちろん、これは英語ネイティブでない人間からの意見なので、ネイティブにとってはこのような話し方がいいのであれば、問題ないと思うっスよ!!!
とフォローをいれつつも・・・
あと、プレゼン中、ESGとかSDGsとか言っていたけど、それって単なるバズワードの羅列に聞こえるっス。このプロジェクトの本筋は、不動産を買って売ること。このビジネスを差別化するところに、環境配慮が入っているだけで、わざわざ自分たちで定めてもいない、ESGについて言及するのは浅はかっス。
と、ほかのグループも触れそうな薄い発言を指摘し・・・
基本的に、このビジネスは2つの機会があるのでは?1つは不動産市場に起きた大きな変化、もう一つは政府をはじめとした環境配慮への実践的な行動が始まったこと。この2つの背景を踏まえて、順番にやりたいことを伝える、つまり不動産市場にこのビジネスのチャンスがあり、事業の差別化の一つとして環境配慮型の〇〇がある、というストーリーはどうっスか?
と締めくくりました。
当然ながら、プレゼン者である学生は、
・・・(プンスカ)
と拗ねてしまい、その後私の目を見て話してくれることはなくなったとさ・・・
ですが、もう一人のプレゼン者が建設的にとらえてくれ、2人のプレゼンの順番を入れ替え、イントロの内容を環境きっかけではなく、不動産市場の問題点の指摘から入るというスムーズなものに。
一方で、拗ねてしまったプレゼン者は、
もう、ワイがやる必要ないやろ・・・
と完全に脱力状態。
そんなことあらへん、お前はプレゼン最高にうまいんやで!みんなお前のプレゼンや笑顔がみたいんや!!
と聞いていたメンバーがちょっと本筋とは外れた方向からフォローをしてくれました。
さすがに私も言い方が良くなかったし、彼女の内容は必要だと思っていたので、
今回のプレゼンには2人の力が必要っス。さっき言った通り、このビジネスモデルは2つの機会を組み合わせたもので、そのうちの環境に対するビジネスチャンスは、あなたのプレゼンの内容がないと成り立たないっス。さっきのプレゼンでしてくれた、あなたの経歴のスライドは絶対に削除せずに、説明したほうがいいと思うっスよ。経歴とこのビジネスの根本が綺麗にマッチしていて、それを話すことでプロフェッショナルとしての意見に昇華するので。写真もあってきれいだし!
と拙い英語でたどたどしく説明。そこから彼女に笑顔が戻ってきて、話を聞いてくれるようになりました。
(よかった ホッ)
さて、今回の失敗点は、彼らの努力を認めてまずは褒める!という手順を怠りいきなり問題点を指摘してしまったことです。誰だって一生懸命準備したものを批判されたら腹が立ちますし、素直に聞き入れるのは難しい、そして人格否定としてとらえられてしまってもおかしくありません。私だって褒めてもらいたいです。
ですので、プレゼンのいいところをしっかりと指摘しつつ、自分が感じた問題点を共有してあげた方が結果として効率的に、そして気持ちよく回せた気がしてなりません。
この反省はさっそく翌日に実行されるのです・・・
お前は残れや
本番当日。プレゼンは午後からスタート。なんとこの日から、バース大学のManagment school生専用の新しい建物がオープンし、そこでプレゼンが実施されることになりました。全員使ったことがない教室だったので、午前中から各グループ30分ずつの持ち時間で練習できることに。
ちなみに今年9月入学のMBA生は完全に新しい建物で授業ができるそうです!うらやましい!!超綺麗ですよー
私たちのグループは、この日の一番初めの練習スロットで9:30~練習開始の予定でした。ですが、プレゼンの一人が遅刻しており、また投資家向けに配るパンフレットの印刷ができていなかったので何人かのメンバーがプレゼンの練習ではなく印刷に行くことになりました。
そこで、
お前は残れや!
と、昨日怒らせてしまったプレゼン者が、そそくさと印刷に逃げようとしていた私を捕まえて、ほかの3人が印刷に行き、私とそのプレゼン者がマンツーマンでプレゼン&フィードバックを行うことに・・・
(印刷に3人も必要なくない・・・?)
と思いつつも、しっかりとフィードバックを行いました。昨日の反省を活かして、まずはいいところを、そして改善できる部分をほめながら指摘、を繰り返しました。
あとから、遅れていたもう一人のプレゼン者が到着した際、
今日は、さとぼうに褒められたで!ホクホク
ととても喜んで報告していましたので、私も昨日の反省を活かすことができホクホクでした。
その後も2人通しでの練習にもフィードバックをし、当初のプレゼンとは大きくスタイルと話の筋が変わりましたが、大体の形は定まりいざ本番へ。
2人とも最終的には私の指摘を受け入れてくれて、ネイティブの考えを変えるほどの論理性を持った議論ができたのだと満足。
ただ、なによりすごいのは、人の指摘をしっかりと受け止めたプレゼン者の2人です。素直ってすごく難しいけれどとても大事です。
3つの賞のうち2つを受賞
プレゼンは、全6グループで行われ、実際の投資家5名がゲストかつ評価者として参加し、質問はすべて彼らが行うというスタイルでした。
私たちのグループが急に最初のピッチとなり、大慌てで準備しましたが、見事に2人が説明してくれました。
投資家からの質問は、収入の見込み、ブレイクイーブン(損益分岐点:投資したお金のもとをとれる時期)などファイナンスに関するものが多かったのですが、
どこの場所から始めるんや?
という質問をいただき、グループのみなが私を見つめ私も待ってましたと言わんばかりに、
South West(バースがある地域)です。もちろんロンドンも検討しましたが、コロナと不動産市場の過熱がロンドン優位の傾向を変え、データから見ると、South Westが初期の投資として最も魅力的であることがわかりました。それは、お手元の資料の6ページにまとめています。フフン♪
と得意げに(拙い英語で)説明。
プレゼン10分、質疑応答15分でしたが、最初の3人から質問がヒートアップしすぎてあっという間に時間終了。あとは、ほかのグループのピッチを見守るだけです。
ほかのグループは、再生可能素材を使ったコップ、サステイナブルな素材でインドで作った服のイギリスでの販売、プレゼントに特化したアプリ、スーパーの廃棄をなくすアプリ、電子レシートといった具合。すべてバラバラな案があるものの、環境配慮はすべてのグループの視点に入っていました。西欧において、無視できない問題のようです。
すべてのピッチと質疑応答が終了し、この中から3つの賞が発表されます。
- ベスト・ピッチ賞(プレゼン、質疑応答の上手さ)
- ベスト・イノベーティブ・アイデア賞(革新的ななアイデア)
- ベスト・ビジネス・アイデア賞(最も実現可能性が高く、投資家が一番投資したいプロジェクト)
これらが6つのグループの中から選ばれます。
なんと、我らのチームは「ベスト・ピッチ賞」と「ベスト・ビジネス・アイデア賞」の2つをいただきました。全部で3つしかない賞なのに、そのうちの2つも我がチームが受賞することができたのは本当にチーム全員の尽力のおかげです。
イノベーティブ・アイデア賞はプレゼントに特化したアプリをピッチしたグループが受賞。このチームには今年のMBA生の中で最もプレゼン資料の作成がうまい学生がおり、すべての投資家がスライドのクオリティを褒めまくっていました。私も彼女と一度プロジェクトが一緒になったことがあり、教授からの成績のフィードバックでスライドが素晴らしいとありましたので、彼女の実力は本物です。
私たちの不動産のアイデアに固めた当初、教授にアイデアを相談したところ、イノベーティブ・アイデア賞は難しいと言われましたが、メンバーの一人が、
ほな、それ以外の2つをワイらが取ったろやないかい!!!
と息を巻いていました。そして、それが実現するとは!!
イギリス人のメンバーは、MBA卒業後にこのビジネスプランを実現したいようでしたので、今回のアイデアが投資家からのお墨付きをもらえて本当に良かったです。
正直、ほかのグループのクオリティがわからなかったので当日までは不安でしたが、ビジネスの実現可能性という面ではやはり私たちのグループのアイデアが地に足がついていた感じです。ほかのグループは、
それイギリスでやる意味ないやろ
損益分岐点の見積もり甘すぎちゃう?
ブロックチェーン使う意味説明してみ?意味わからへんやろ?
は?その再生可能材料、イギリスの法律では使えへんの?それでイギリス展開?どういうこっちゃ。
などなど、結構本質にかかわる質問がでており、回答も苦戦していました。
そんなこんなで、すべてのプログラムが終了。何気にこの授業がMBAとして最後の授業でした。
ですので、もう授業は一切ありません!!!
残すは修士論文2つのみ。
これにてバース大学MBAのすべての授業が終了しました。
いろいろと苦労の多い学習でしたが、最後は最高の結果に終われたので、とても満足しています。(まだ論文が残っていますが)
今後は就活に注力して、残りのバース生活を楽しもうと思います。